ウィトゲンシュタイン、最初の一歩

ウィトゲンシュタイン、最初の一歩(2021)
著 中村 昇

*本の内容に限らず自分の考えを綴ろうと思う…

■ 28 嘘をつくということ
■ 29 デリダとウィトゲンシュタイン

オースティンが寄生的と呼んだものは、逆に本質に触れるものなのかもしれない…人は作られた世界で作られた役を演じる…普段「現実」と呼んでいるものも作り物(虚構)だ…音楽の世界も同じこと…音楽は現実ではないというのが通常の言葉遣いだろう…しかし音楽も(虚構という)現実であり,むしろ純度の高いもの(エッセンス、典型、象徴…)としてあるものなのかもしれない…デリダの言う「反復(反覆)可能性」は音楽にも当てはまる…

「私」とは分かりあえないことの証…
言葉や音楽はその叫びみたいなもの…
作品とは独り言でもあり遺言でもある…

https://hitkeas.com/2017/08/19/parole-ecriture/

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いのちの種を抱きしめて

いのちの種を抱きしめて(2014)
出演 ヴァンダナ・シヴァ、辻 信一、サティシュ・クマール

反グローバリズムや脱成長という言葉をよく目にするようになった…それらは地球上のあちこちで実際に見られる現象でもある…この動きは決して一過性のものではないのだろう…サパティスタにしろ、ナヴダーニャにしろ基本的な考えは同じなのではないだろうか…グローバリズムによって世界はお金で繋がった…国境を越えて大企業が利を得る社会となってしまった…

ヴァンダナ・シヴァはガンディー思想の後継者でもある…コモンズ、ローカリゼーション、アース・デモクラシー…ひとまわりしてまたガンディーに戻ってきた…

https://hitkeas.com/2017/12/01/ガンジーの危険な平和憲法案/

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Le Père Noël supplicié

火炙りにされたサンタクロース(1952)
(「われらみな食人種」所収 )
著 クロード・レヴィ=ストロース
監訳 渡辺公三
訳 泉克典

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021121600184&g=int

ディジョンでサンタクロースが火炙りになったのは1951年…アメリカから輸入された慣習への反発だった…聖職者たちは降誕祭の宗教的価値が薄れつつあることを憂いていた…しかしレヴィ=ストロースはもっぱらアメリカの影響にするのは単純すぎると言う…ここでは輸入された慣習は同化というより寧ろ触媒の役割を果たしている…潜んでいた類似の慣習が顕在化したのだと…今日のクリスマスは歴史の中で目まぐるしい変動を繰り返してきた儀礼であって、すでに数々の栄枯盛衰を経てきていた…アメリカ的形態はもっとも現代的なアバターに過ぎない…ではなぜ一部の敵意がサンタクロースに集中するのだろうか…

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La démocratie aux marges

民主主義の非西洋起源について(2014)
著 デヴィッド・グレーバー
訳 片岡大右

■ 結論 国家の危機

サパティスタはラカンドンの森におおむね多民族的と言えるコミュニティを形成してきた…彼らが身を置いているのは、これまで民主主義的即興の空間と呼んだものの典型例だ…彼らは国家の外に置かれた即興空間の住人に他ならない…彼らのアイデアは、惑星全体に広がる一連の社会運動に途方もないインパクトをもたらしている…彼らが民主主義という言葉を選択するのは、アイデンティティ政治の香りを漂わせるもの全てを拒絶するという意思表示であり、議論や関心の輪をメキシコ内外に広げる意味があった…それは何か特定の言説から生じてきたのではないし、伝統的なマヤの実戦に由来するものでもない…その複数的な起源は、先住民の実戦と様々な潮流のアイデアとの持続的な対話のうちに探し求めるべきだろう…

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HOWL

吠える その他の詩(1956)
著 アレン・ギンズバーグ
訳 柴田 元幸

理性、モラル、有用性、科学、常識、普通…はありのままを別の姿に書き換えてしまう…答えを示し従えようとする…それらにはそれらなりの役割があるしそれらに頼るしかないとしてもそれらに抵抗することでしか価値は生まれないのではないだろうか…価値とは結果とか成績では計れないものだ…モレクは恩恵と引き換えに犠牲を求める…ヒップスターたちは抵抗し悶え吠えた…

https://hitkeas.com/2021/07/20/matrix/
https://hitkeas.com/2021/02/20/life-2/

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Motel Chronicles

モーテル・クロニクルズ(1986)
著 サム・シェパード
訳 畑中 佳樹

ここの人々は
いつのまにか
彼らがそのふりをしている
人々になった
(p51)

前に読んだのはいつだったか…
覚えているフレーズは上記ぐらいで…
わりと引きずってる言葉だ…
この本の言葉だったことも忘れていた…

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GHOST OF CHANCE

ゴースト(1991)
著 W.バロウズ
訳 山形浩生

キツネザルは英語でレムール(LEMUR)と呼ばれている…
元々はローマ神話で「死者の霊」を意味する言葉だ…
マダガスカルなどの僅かな孤島に生息している…
手懐けることが難しく、排泄物には多くの病原体が潜んでいるらしい…

タイトルは「僅かな可能性」という意味の慣用句だ…
キツネザルが希少であることと、人類への望みを重ねているのかもしれない…
バロウズは自然や動物との対比の中でヒトの醜さを炙り出している…

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/1009/feature05/
https://kagakubar.com/mandala/mandala05.html
山形さんはどういうわけか「LEMUR」をキツネザルではなく、メガネザルと訳している…
物語はマダガスカルの歴史を意外と忠実になぞっている…

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STRANGER

ジム ジャームッシュ インタビューズ
編 ルドヴィグ・ヘルツベリ
訳 三浦 哲哉

■ There is no paradise
Harlen Jacobson/1984

■ “East European director”
Peter Belsito/1985

タイトルの意味が少しずつ見えてくる…
Stranger in Paradise を捩っているらしい…

「…僕はさかさまに書くんだ。つまり、語るべきストーリーがまずあってそのうえで肉付けしていくというのではなくて、まず最初にディテールを集めて、その後、パズルみたいにストーリーを組み立てていく。主題、ある種のムード、それからキャタクターはあっても、直線的に進むプロットはない。…プロットありきという考え方にはぞっとするんだよ。プロセスにこそなにかがあると考えていたほうがエキサイティングだ。僕の方からストーリーを定式化するというより、ストーリー自身が自分のことを僕に話し始めてくれるんだ。」(p32)

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Eating Animals

イーティング・アニマル(2009)
著 ジョナサン・サフラン・フォア
訳 黒川 由美

我が町にも食肉加工場はある…
検査機関も併設されている…
平日は数百メートル先まで豚の鳴き声が聞こえる…
革製品を扱う工場もある…海外からの注文も多い…
工場は原発や米軍基地のようなものだ…
住民の生活を支えている…

動物の犠牲に関わるものを今すぐすべて否定することはできない…
社会全体が少しずつ別の選択をするよう願うだけだ…
おそらく正解とは頭の中の出来事に過ぎないのだろうし…
何にしろ穏やかな気持ちでいたい…
人同士の軋轢も、動物の犠牲もないのが理想だ…

人は「食事をする」動物だと著者は言う…
さらに言うなら「食べ物を作る」唯一の動物だろう…
自然界に「食べ物」は存在しない…
食べる行為があるだけだ…

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Ein Bericht für eine Akademie

ある学会報告(1917)
著 フランツ・カフカ
訳 池内 紀編

ペーターは「出口」を求めていた…それは文明社会への「入り口」でもあり、順応、適応を意味している…さらにペーターは「出口」が「自由」と同義ではないことを強調する…人は自由を求めるが、それは見当違いの身の丈に合わない背伸びと言わんばかりだ…自然の本性に逆らっていると…

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