ぼくはあと何回、満月を見るだろう

ぼくはあと何回、満月を見るだろう(2023)
著 坂本 龍一

「人間の寿命が80歳や90歳まで延びたのは、せいぜいこの30年〜40年くらいのこと。20万年とも言われる人類の長い歴史で医療などなかった時代のことを考えたら、果たして無理してまで命を延ばすのがいいことか、分かりません。ぼくは、辛く苦しい治療を拒否して、最小限のケアだけで最期を迎えるという価値観が、世の中でもっと許容されてもいいと思う。その意味で、オランダやベルギーで合法化されている安楽死にも興味があります。…基本的には自然に生き、自然に死んでいくというのが動物の本来の生命のあり方だと思っているんです。人間だけが、そこから外れてしまっている。」(p34)

ゴダールは安楽死を選んだらしい…しかし自分には延命治療も安楽死も同じ類の操作のように思えてくる…ジャームッシュの「DEAD MAN」でノーボディがブレイクを船で沖に流すのとは違う…後述のピアノの話へ…

「本来、自然界の主役は動物や虫や植物で、ぼくたち人間はその一角にそっとお邪魔しているに過ぎない。よく「住宅街に猿が出た」などというニュースが報じられますが、それは話が逆で、もともと猿の生息地だったところに我々が住まわせてもらってるのだと思います。」(p256)

人も平等に主役なんだと思いますけどね…ただ、人は地球上で癌細胞(ここでこんな表現することを許してもらいたい)になってしまっている…知性は自らを顧みない…一番厄介なこと…

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HALO

教授の葬儀で流された曲のプレイリストの最後にローレル・ヘイローという名前があった…年を重ねてからは積極的に曲を聴いているわけでもないので、知らないアーティストも多い…とりあえず何曲か聴いてみた…掴みどころがないわりには何度も聴きたくなる…中毒性がある…

心象に忠実というか、いい意味での曖昧さを感じる…どこかに辿り着くことなく漂い続ける音群…ENOやALVA NOTOの要素もどこかに感じつつ彼女独特の世界がある…揺さぶられる…

https://music.apple.com/jp/playlist/halo/pl.u-ker5Se6Xj

Three Stories

スペインの家:三つの物語(2014)
著 J.M.クッツェー
訳 くぼた のぞみ

情が移るという言葉がある…
動物に対して使うこともあるだろう…
家に対しても…

人も例外ではない…
人は自分に、身近な他者に、情を移している…
遠くの知らない人には…それほどではない…
随分前に死んだ人に対しても…

従者とは登場人物のことだろうか…
デフォーとロビンソンが入れ替わっている…
ロビンソンがデフォーを描いているかのようだ…
従者とは主人公であり作家であり…

人は私とかあなたを作っている…
物語を作っている…
そうやって生きている…

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水俣曼荼羅

水俣曼荼羅(2021)
監督 原 一男

ここには縮図がある…
文明の基本構造と言っていい…
大きな社会でぼんやりしているもの…

恩恵は犠牲の上に成り立っている…
差別、病気、貧困、環境破壊、動物の犠牲…
法律や倫理とは何なのだろう…
戦争にもルールがあるらしい…
大きな社会は超間接的につながっている…
多くの場合加害者は特定できず…
被害者の姿も見えない…

末梢神経が損傷している場合、自覚症状があるらしい…
脳が損傷している場合、末梢の麻痺が分からないらしい…

ほぼ地元だけど、「MINAMATA」にしろ「曼荼羅」にしろ地元で観た人がどれだけいるのだろうか…むしろ地元だから見ないのかもしれない…地元民と他所者の評価には必ず溝がある…同じ地元民でも立場や意見は違う…善と悪を固定すべきでないことも分かる…誰かを責めるというよりも、人社会の在りようを見極めたい…水俣病だけの問題ではない…

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ABOVE THE CLOUDS

雲の上へ(2018)
著 キリアン・ジョルネ
訳 岩崎 晋也

なぜ山に登るのか…
なぜ山を走るのか…

球磨川を走るだいぶ前に読み始めた…
しばらくトレーニングとか準備で本と向き合うことができずにいた…
読み終えたのはレースの一週間後…
天と地ほどの差があるとはいえ、接点は少なくない…

以下キリアンの言葉…

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Wayne Shorter

Wayne Shorter(1933-2023)

Bitches Brew(1970)Miles Davis
Native Dancer(1975)Wayne Shorter
Heavy Weather(1977)Weather Report

自分にとってのウェイン・ショーターはこの3枚…
サンクチュアリの緊張と興奮…
ナシメントとの共演での優しさ…
ザヴィヌル、ジャコパスとの化学反応…

エスペランサはショーターをヒーローと言っていた…

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I Have Arrived, I Am Home

Thich Nhat Hanh が亡くなって1年になる…

特定の宗教に興味はないが…
その態度というか、歩き方というか…
とても謙虚なイメージ…
清らかなイメージ…
そういうものに惹かれる…
学びがあるように感じる…
https://hitkeas.com/2021/02/11/the-other-shore/
https://hitkeas.com/2019/03/09/zen-keys/

ワタシとかアナタとか…
それは勘違いみたいなものだ…
絶えるとき、勘違いは解ける…
大したことではないのかもしれない…

亡くなったときに作った曲…
https://hitkeas.com/2022/02/01/lotus/

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