WERCKMEISTER HARMÓNIÁK

ヴェルクマイスター・ハーモニー(2000)
監督 タル・ベーラ
原作/脚本 クラスナホルカイ・ラースロー

人は種を取り、植物のコピーを作った…
分子構造に手を加え、プラスチックを作った…
オクターブを等分割し、自由に転調できるようにした…

恩恵の陰で何かが犠牲になっている…
無理をしている…
不和が生じる…
解決しようとする…
恩恵と犠牲が上書きされる…

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Le Diable probablement

たぶん悪魔が(1977)
監督 ロベール・ブレッソン

誰もが解決しようとする…
しかし国家も宗教も技術も恋愛も役に立たない…
それでは何も変わらない…

加害者は誰なのか…
鈍感であることは、日々を過ごすテクニックだ…

極論ではない…
それは私たちの日常…

彼は為そうとしない…
彼は社会に消されたのだろう…

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ハッピーアワー

ハッピーアワー(2015)
監督 濱口 竜介

夏に見たいと思ってた…
夏はどういうわけか古い記憶がよぎる…
まだ若く友人も多いときの記憶…

人を観たかった…
飢えてるのかもしれない…
期待通り、みんな一筋縄ではなかった…
みんな愛おしく感じた…

人は弱いし足りないし…
正解もない、だから…
強がるしかないし、勘違いするしかない…

すぐそばにある物語だ…
なにげに日常の検証を迫られる…
観終えると、少し優しくなれるのかもしれない…

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Tilda Swinton

画像引用元

もう5年経ったらしい…Derek Jarman が晩年過ごしたコテージの存続プロジェクトにほんの少しだけ協力させてもらった…恥ずかしながら、海と言葉を超えて関われたことは素直に嬉しい…Tilda Swinton の呼びかけだった…
https://tashkie.com/2020/01/26/prospect-cottage/
Celebrating five years of Prospect Cottage in public ownership

The ‘Okja’ Interview: Tilda Swinton on Learning from Her Children, Four-Legged Wisdom and Cinematic Friendships

Are you personally a vegetarian?
Swinton: I don’t really eat meat. But I will say that I live in a place where it’s very easy to find wild meat and meat that you know where it came from, how it was killed. So if I eat meat I know it’s wild, but I’m privileged to live where I do and it’s very very difficult to do if you live in cities. And more so if you are dealing with a tight budget. As Nancy [Lucy Mirando’s sister] says in the film, “if it’s cheap, they’ll eat it.” And we are up against that.

あなたはベジタリアンですか?
スウィントン:私はあまり肉を食べません。でも、私が住んでいる場所は、野生の肉なのか、どこから来たのか、どのように殺されたのかが容易に分かる環境です。だから、もし肉を食べるとしてもそれが野生の肉だと分かっているし、それだけ私は恵まれた場所に住んでいますが、都会に住んでいればとても難しいことでしょう。予算が厳しい場合はなおさらです。映画の中でナンシー(ルーシー・ミランドの妹)が言うように、「安ければ、みんな食べる」のです。私たちはそれに立ち向かっています。

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悪は存在しない

悪は存在しない(2023)
監督 濱口竜介

ゴダール風のテロップで始まる…美しくそして不穏な森が描かれる…「悪者はいない」ことを描くだけなら森や動物は必ずしも必要ではない…しかしこの映画は野生との対比の中で何かが際立っている…誰もがそれぞれの事情の中でより良く生きようとしている…どこにも悪者はいない…一方で、そもそも善悪なんてものは人の思惑が作るものであって世の中は別の原理で動いている…無慈悲な自然の摂理があるだけ…それらをバタイユ風に言えば「まやかし」と「きまぐれ」…人は大したことができるわけではない…ほんとは自然を破壊することもできないし、進歩もそう見えるに過ぎない…ただ人が求める恩恵は、いつも人にとって不都合なことを招く…

近頃「神話」の必要性を問う言葉をよく見かける…自然の偉大さとか、人の未熟さとか、それらを教え伝えるもの…今なら「寓話」になるのかもしれない…この映画にも寓話的要素がある…キリンが我が子を守るためにライオンに立ち向かうように、一種の災いを絶とうとしたかのように見えた…まぁあまり正解を探り過ぎない方がいいのかもしれない…神話が神話であるということはそういうことだと思うし…

日本は放置林の問題を抱えている…戦後多くのスギやヒノキが日本全国で植樹されたものの、木材需要の低下や林業離れの影響により放置され、土砂災害、河川氾濫などの危険度が増している…花粉被害だけじゃない…よく見ると山はスギだらけだ…その殆どが放置されたスギではないのか…放置林は水質にも影響を与え、動物の棲家も奪っている…大気汚染や海洋汚染だけではない…山は文明の対となる自然の象徴なのかもしれないが、すでに汚染されている…バランスが崩れているというより、すべてのバランスは保たれる以外にありえないわけだけど…

https://www.more-trees.org
教授が創立した森林保全団体

クマが民家に降りてきたり人を襲ったりすることに関して…例えば自分が銃を持っていてクマが襲ってきたら射殺を試みるだろう…それに類する行為は優先して然るべきだ…猟師のことやクマの生態に詳しくはないが急場を凌ぐための処置は許容されていい…問題は歴史や現状の把握と今後の対策だろう…それは殺処分と同じ土俵で語れるものではない…もともとヒトもクマもシカも或る意味等しく暮らしていたのだと思う…でも人は欲張った…人口は爆発的に増え、生活圏も広がり、土地は固められ、森や川にも人の手が入った…私たちは恩恵しか見ない…だから人口爆発より少子化の方を問題にする…もっと全体を俯瞰することが必要だし、同時に、自分たちが何者なのかを知る必要があるのではないだろうか…

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KUOLLEET LEHDET

枯れ葉(2023)
監督 アキ・カウリスマキ

もう映画は撮らないと宣言して6年…カウリスマキは帰ってきた…何も変わらない…ブレてない…不器用で無愛想で、最後はホッコリしてしまう…飾らない究極の人間讃歌…以下素敵すぎるカウリスマキの言葉…

「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。」(公式HPより)

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獨立時代

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994)
監督 エドワード・ヤン(楊德昌)

この夏、古い友人たちと会った…今となれば眩しい記憶が蘇る…懐かしさだけじゃなく歯痒さに似た感覚も湧いてきて、そういう気持ちになれたことが何故か嬉しかった…当時を振り返ると、許して欲しいと思うこともそれなりにある…そういうものだろう…大切な思い出だ…

エドワード・ヤンの映画を見ると、古い記憶が刺激される…急速に近代化する台湾には、ここ日本で若いとき感じていた時代の流れと同調するものがあるのかもしれない…ヤンの視線はいつも優しい…少し引いた距離感ですべてを写し出す…

散らかりすぎて頭の整理に時間がかかる上に、凝縮されすぎて気持ちの整理もできないまま終わりを迎えてしまった…とにかく忙しい映画だ…これが現代社会なのかもしれない…

お金や名誉というのは、結局満たしてくれない…法律や道徳(枠組みに関わるもの)も同じ類いのものだ…日常はつまらなさで溢れている…進歩、正解、勝利、美味(動機や成果に関わるもの)、いずれにしろ変わらない…私たちはそういう世界でしか生きられない…人はいつの間にか進んで勘違いするようになった…

勘違いに気づいてる感覚…
その感覚を大事にしたい…

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フィッシュマンズ

画像引用元

フィッシュマンズ(2021)
監督 手嶋悠貴

今更ながら音と言葉が響いたから…
まっすぐ生きている人を見るのは気持ちいい…
逆に辛いのかな…

佐藤氏と同い年だ…
同じ時代を生きていた…

彼らのデビューは1987年…
自分がテープ録音とか芝居やってたときのこと…
大したことしてなかったけど…
ただ何となく自分とダブらせてしまった…
同じ時代や空気の中にいたのかな…
眠ってた何かが同期する…

すばらしくナイス…

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รักที่ขอนแก่น

光りの墓(2015)
監督 アピチャッポン・ウィーラセタクン

眠っているのは兵士であり、かつての王の影響下にあるらしい…生と死、過去と現在、睡眠と覚醒…すべての境界が曖昧になっている…私たちの住む世界はそういうものなのかもしれない…私たちはバーチャルな世界を生きている…本物が別にあるわけではなく、そもそも認識とは勘違いみたいなものだ…

アピチャッポン監督の映像には独特の緩さがある…多分タルコフスキーのような時間の流れ方なのだろうけど、もっとユーモアがあり、特定の場所に辿り着こうともしない…常に違う位相/レイヤを残している…

タイは今年の総選挙において軍の政治介入にノーを突きつけた…しかし民主派の前進党は連立を作れず、タイ貢献党による親軍連立政権となった…

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Alex Honnold

画像引用元

FREE SOLO(2018)
監督 Elizabeth Chai Vasarhelyi、Jimmy Chin
出演 Alex Honnold

いつ死んでもおかしくない…チャレンジして死ぬなら、それは理想の死に方なのかもしれない…オノルドは登ることで「生」を実感できると言っている…

オノルドは菜食者だ…長い車上生活をきっかけに菜食をするようになったらしい…食肉の環境負荷の高さへの言及も見られる…以下はオノルドが推薦する映画と本…いずれもココで取り上げている…
Game Changers
Cowspiracy
Eating Animals

低所得世帯への太陽光パネル支援も…
ソーラーパネルに問題がないわけではないが、低所得世帯への提供で救われる人がいるのは確かだ…
https://www.honnoldfoundation.org

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