MEMORIA

メモリア(2021)
監督 アピチャッポン・ウィーラセタクン

停止してると思ったら普通に再生されてたということが何度もあった…全編タルコフスキーのような長回しで構図も綺麗…ただ被写体が全く動かない長回しも多く、周囲の微妙な草の揺れで再生を確認することも…

「ブンミおじさんの森」は観てないのだけど、アピチャッポン監督はアニミズム的な思想を持ってるのかもしれない…様々なものに記憶が宿り、それを受信再生する…それは私たちの知性が壊れる様子を描写していると解釈できないだろうか…私が私でなくなろうとしているかのような…個が絶え一つの流れになる…そう考えると全体のスローなテンポや辻褄の合わないことが、逆に納得できるような気がしてくる…

ティルダ・スウィントンは制作にも大きく関わっているらしい…立ってるだけの演技も流石…アピチャッポン監督も、背中だけで何分も撮ったり、とてもいい画だと感じた…曲はむしろ邪魔と思える映像…一種のリアルな体験なのだろう…

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ぼくはあと何回、満月を見るだろう

ぼくはあと何回、満月を見るだろう(2023)
著 坂本 龍一

「人間の寿命が80歳や90歳まで延びたのは、せいぜいこの30年〜40年くらいのこと。20万年とも言われる人類の長い歴史で医療などなかった時代のことを考えたら、果たして無理してまで命を延ばすのがいいことか、分かりません。ぼくは、辛く苦しい治療を拒否して、最小限のケアだけで最期を迎えるという価値観が、世の中でもっと許容されてもいいと思う。その意味で、オランダやベルギーで合法化されている安楽死にも興味があります。…基本的には自然に生き、自然に死んでいくというのが動物の本来の生命のあり方だと思っているんです。人間だけが、そこから外れてしまっている。」(p34)

ゴダールは安楽死を選んだらしい…しかし自分には延命治療も安楽死も同じ類の操作のように思えてくる…ジャームッシュの「DEAD MAN」でノーボディがブレイクを船で沖に流すのとは違う…後述のピアノの話へ…

「本来、自然界の主役は動物や虫や植物で、ぼくたち人間はその一角にそっとお邪魔しているに過ぎない。よく「住宅街に猿が出た」などというニュースが報じられますが、それは話が逆で、もともと猿の生息地だったところに我々が住まわせてもらってるのだと思います。」(p256)

人も平等に主役なんだと思いますけどね…ただ、人は地球上で癌細胞(ここでこんな表現することを許してもらいたい)になってしまっている…知性は自らを顧みない…一番厄介なこと…

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KIRISHIMA

第11回 霧島・えびの高原エクストリームトレイル – 65.5km(DNF)

昨年同様、最終エイドでリタイヤを決めた…今回は頚椎症(頭痛、吐き気)と腰痛に耐えられなかった…ちょうど1週間前に熱中症らしき症状が出てだるかったのでそっちを疑ったのだけど、レース後の首周りの症状からしておそらく頚椎症の方だろう…腰痛の方は今年に入って一番良い状態だった…いちおう予防でブロック注射してもらったのだけど、注射そのものの痛みが着地の際に響いた…想定外の痛み…いままでは元々の痛みで分かりにくかったのかも…

完走は大会の醍醐味だ…ただ自分がトレイルランに求めているものは違う…完走は最高の特典であり最高のオプションなのだろう…山を気持ちよく走り、程よく負荷を感じたい…そういう要素が大会にもある限りは参加したい…自分で近所の山に行けばいいのかもしれない…しかし走りたい山はそう見つかるものではない…動物や虫の襲来も怖いし、道に迷うリスクもあるし、不法侵入はしたくないし、そもそもいろんな山(或いは知らない山)を走ってみたい…だから大会に出場するのが安全で手っ取り早い…走る契機にもなるし、モチベーション維持のためにもいい…

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HALO

教授の葬儀で流された曲のプレイリストの最後にローレル・ヘイローという名前があった…年を重ねてからは積極的に曲を聴いているわけでもないので、知らないアーティストも多い…とりあえず何曲か聴いてみた…掴みどころがないわりには何度も聴きたくなる…中毒性がある…

心象に忠実というか、いい意味での曖昧さを感じる…どこかに辿り着くことなく漂い続ける音群…ENOやALVA NOTOの要素もどこかに感じつつ彼女独特の世界がある…揺さぶられる…

https://music.apple.com/jp/playlist/halo/pl.u-ker5Se6Xj

WEAKNESS

弱さは決して悪ではない…

そもそも地球上で一番の邪魔者は人類だろう…
人社会に馴染むことが何を意味するのか…

人と家畜の異常発生…
森は焼かれ、山は削られ…
地表は縦横に固められ、硬い構築物が乱立する…
スマホを手放せない…
ミサイルを手放せない…

人社会は強者の論理で動いている…
そうでない社会は衰退する…
恩恵のために犠牲に目を瞑る…
ゴミ、貧困、差別、動物の犠牲…人社会の排泄物…

教育はそういう社会への適応を促す…
ライオンが狩りを教えることとは何かが違う…

一方で、私たちに他の道があるわけではない…
だから教えなくてはならない…
何を…

私たちは答えのない世界に生きている…
そして常に加害者として生きている…
そういう側面を教えているだろうか…

戦争をしなくなったら賢くなったのだろうか…
環境破壊、自殺、ハラスメント…
相変わらず同じことが繰り返されている…
いま、この意識の中で…

より便利に…
より優位に…
より刺激を…
その中に隠れている…

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AI

人の可視領域は限られている…
可聴域も限られている…
人の感覚が届く生活圏みたいなものを考えるなら…
それは今よりずっと小さく単純なものかもしれない…
かつての狩猟採集民が数十人で生活していたように…
現代の未開民族が数十人で暮らしているように…

AIが世の中を変えるとか、脅威だとか…
それは今始まったことなのだろうか…

知性が主導権を握り始めたのは遠い昔のこと…
それはゆっくりとではあるが劇的な変化だった…
コロンブスやニュートンの業績は同じベクトルを持っている…
主導権を握った知性の様々な業績…

ゴミが増え始めて環境問題に気づく…
人はいつも遅れて気づく…
微量の放射性廃棄物は問題にならないらしい…
そういう解決の仕方しかできない…
子供が増えたらすべて解決するとか…
人と家畜の多さはすでに地球と釣り合っていないのではないか…

未開社会の人たちにとって…
地球が丸いこととか…
地球の裏側にも人が住んでいることとか…
それらは興味の対象だろうか…

未開社会において主導権を握っているのは知性ではない…
おそらく知性は別の役割を担っている…

目の前の恩恵で何も見えないうちは…
環境問題は無くならない…

AIが脅威なのではない…
ずっと前から始まっている…
すでに沼の中にいる…

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KAGAMIZU

第10回 宮崎鏡洲の森トレイル – 26km

昨年はレース中に体調を崩して苦しんだ…今回はレース前に腰痛が悪化…いつものブロック注射がどこまで効くか…腰の違和感はレース前からハッキリあった…距離が短いだけに悪化する前にゴールに滑り込みたかった…予想通りスタート直後から若干の痛みあり…急がず自分のリズムで走ることに集中した…結果は苦しんだ昨年より17分早くゴール…痛さより走る気持ちよさが勝ったようだ…昨年はレース後、頭痛と吐き気ですぐに運転できなかったが今回は無事だった…

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Three Stories

スペインの家:三つの物語(2014)
著 J.M.クッツェー
訳 くぼた のぞみ

情が移るという言葉がある…
動物に対して使うこともあるだろう…
家に対しても…

人も例外ではない…
人は自分に、身近な他者に、情を移している…
遠くの知らない人には…それほどではない…
随分前に死んだ人に対しても…

従者とは登場人物のことだろうか…
デフォーとロビンソンが入れ替わっている…
ロビンソンがデフォーを描いているかのようだ…
従者とは主人公であり作家であり…

人は私とかあなたを作っている…
物語を作っている…
そうやって生きている…

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