تفصيلثانوي

とるに足りない細部(2017)
著 アダニーヤ・シブリー
訳 山本 薫

読み終えて『Notre Musique』のオルガが過った…
オルガはイスラエルで自爆テロリストと間違えられ射殺される…
作中、ゴダールは自ら語っている…
目を開けて見ること…
目を閉じて想像すること…

第1部の舞台は1949年のネゲブ砂漠…イスラエル人の「彼」を中心に起こる出来事(これと言って何も起こらない)が淡々と描かれ、その後ある”事件”によって話は一旦幕を閉じる…

1948 イスラエル独立宣言 ナクバ 第一次中東戦争
1956 第二次中東戦争
1960 アイヒマン裁判
1967 第三次中東戦争
1973 第四次中東戦争
1987-1993 第一次インティファーダ
2000-2005 第二次インティファーダ
2004 アラファト氏死去
2023 2023パレスチナ・イスラエル戦争

第2部は現在のラマッラーから始まる…パレスチナ人である「私」が些細なきっかけから”事件”を辿ることになる…「私」が見つけたのは取るに足りないものだ…何かを受け取ったのかもしれない…「私」が住むのはヨルダン川西岸地区…A地区からC地区まであり、自治区と称しながら、パレスチナ人は段階的に自由が制限されている…まるで架空のSF小説を想起させるが、状況設定は現実そのものだ…イスラエルは徐々にパレスチナの痕跡を消そうとしている…地図、道路、地名までもが少しずつ確実に覚えのないものへと書き換えられている…

「彼」は没個性化した存在だ…「彼」自身の中で何かが消されてしまっている…そして「彼」にとってベドウィンの少女も没個性化した存在でしかない…シブリーの語る恐怖とは、言葉が力を失い、世の中が暴走することへの恐怖なのだと思う…人の尊厳や、自然に対する謝意が、取るに足りないものとされ、消されてしまうことへの恐怖…