THE DRAGON CAN’T DANCE

ドラゴンは踊れない(1979)
著 アール・ラヴレイス
訳 中村和恵

文明がまだ未熟だったころから、踊りや音楽はずっとその中心にあったのだろう…それらは例外なく土地に根ざしたものであり、他所からの影響を受けつつも土地固有のものとして受け継がれてきた…時が経ち現代の音楽やダンスは土地から切り離され、世界中の人が楽しめるものになっている…トリニダード・トバゴのカリプソやカーニバルは、歴史上最後の民族音楽、民族舞踏のひとつになるのかもしれない…スティールパンは最後に発明されたアコースティック楽器と言われている…

祝祭や伝統芸能は昔の意味合いを薄めてきている…今、祭りは形骸化するかすでに消滅した…おそらく最初は自然や神のようなものと上手くやっていくためのものだったのだろう…少しずつ意味合いは変化したとしても、概ねそれらは今の価値観からすると大掛かりな無駄とでも言えるようなものだった…今では必要なものだけが生き残る…それは競争社会が作る物差しによるものだ…本当に必要なものとは何だろうか…

オルハン・パムクの「雪」が重なった…オルドリックはKAR、フィッシュアイは紺青、ドラゴン或いはカーニバルはイスラム、仕事やスポンサーは西洋、そしてシルヴィアはイペッキ…もちろん全て一緒にする気はないが、大きな流れや構図は似てるのだと思う…おそらくこの構図は世界中がいま体験している進行形のものだ…遅かれ早かれ直面していることであり、ゆっくりじわじわと確実に進行している…人は今、問われているのだと思う…

調べると、訳者の中村和恵さんはクッツェーの翻訳を多く手掛けている“くぼたのぞみ”さんと多数共著を出している…アフリカとカリブを伝えることには多くの共通点があるように思える…


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