(画像引用元)
雪(2002)
著 オルハン・パムク
訳 和久井路子
舞台となるカルスはグルジェフ生誕の地…アルメニアやロシアの影響を強く受けている…クルド人居住区の最北端…今では辺境と呼んでいいのかもしれない…
東西が交差する場所とはいえ、国政の軸にはイスラムがあるのだろうと思って読み始めたのだけど、当時のトルコはその逆だということが次第に分かってくる…イスラムの教えが強いとはいえ、英雄とされるアタチュルクは国家を西欧化することを軸としていた…つまり国家、軍、警察の方が政教分離(世俗主義)を唱えるある意味無神論の側であり、ムスリムは国家から圧力を受ける存在だった(現在のトルコはエルドアン大統領の政策によって立場が再度逆転している)…
ハンチントンが指摘する相容れないものを見せられているようでもあり、グレーバーが指摘するように間の空間で民主主義が生まれる現場を見ているようでもあり…以下は小説内でイスラム過激派の中核とされる「紺青」(英訳ではBLUE)の言葉…
「西の人々が考えているように、我々がここで我々の神とこれほど強く結ばれている理由は、かくも貧しいことではなくて、なぜこの世にいるのか、そしてあの世でどうなるかに誰よりも関心をもっているからだ。」「彼らの偉大なるデモクラシーを神の言葉よりもより信じているように見える西は、カルスのデモクラシーに反対する軍のクーデタに反対するだろうか?」「あるいは、彼らにとって大事なのは、デモクラシー、自由、人権ではなくて、遅れている後進世界が西を猿のように真似ることか? 自分たちに全然似ていない敵が達成したデモクラシーを西は受け入れられるか? それに、西の外にいる、この世の他の人々に言いたいことがある。ー兄弟たちよ、君たちは一人ぼっちではない…と。」(p300-p301)
旧訳を読んだ…悪く言えば機械翻訳みたいではあるのだけど、原文の味わいを残しているという評価もある…日本語として美しいものではないように感じたけど、読んでいるうちに慣れてきたというか、独特の言い回しや無骨さが気にならなくなっていた…
ただでさえ読むのが遅いのに550ページほどの長編小説…いつから読んでたのか忘れてしまった…たぶん数ヶ月前…気づいたら冬…昨日、ここらでは早い初雪を観測した…