雨の島(2019)
著 呉 明益(ウ・ミンイ)
訳 及川 茜
自然を舞台にしているというよりも、自然の一部としての人間を描いているような、そんな話だ…資料とノンフィクションに頼る通常のネイチャーライティングとは違う…フィクションであると同時に、自然に深く分け入る内容でありながら近未来の設定だ…それが逆に人の原点をうまく透かして見せてくれているように感じた…作者の言葉を借りるなら「結局のところ、人類の文明はどの段階をとっても(フィクションを生み出す能力と想像力を含めて)自然環境と私たち自身の生物的本質との関係から切り離せない」…呉明益は画家でもあり、6つの物語にそれぞれ精緻な絵を添えている…
地球上には原住民と呼ばれる人たちがまだ多数生存している…サパティスタが生活するチアパスにもラカンドンという原住民がいる…森の名前もラカンドンだが周りが同じ名で読んでいる人々のことだ…文明社会への編入の試みはあったがいずれも失敗に終わっている…実は台湾にも原住民と呼べる人々が多数暮らしている…宮古島島民遭難事件は日本の台湾出兵に繋がった…近くて繋がりの深い国の話…
以下は台湾で放送された呉明益原作のドラマ「歩道橋の魔術師」…