ゴースト(1991)
著 W.バロウズ
訳 山形浩生
キツネザルは英語でレムール(LEMUR)と呼ばれている…
元々はローマ神話で「死者の霊」を意味する言葉だ…
マダガスカルなどの僅かな孤島に生息している…
手懐けることが難しく、排泄物には多くの病原体が潜んでいるらしい…
タイトルは「僅かな可能性」という意味の慣用句だ…
キツネザルが希少であることと、人類への望みを重ねているのかもしれない…
バロウズは自然や動物との対比の中でヒトの醜さを炙り出している…
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/1009/feature05/
https://kagakubar.com/mandala/mandala05.html
山形さんはどういうわけか「LEMUR」をキツネザルではなく、メガネザルと訳している…
物語はマダガスカルの歴史を意外と忠実になぞっている…
印象深い表現をいくつか…
スナイダーやバタイユを思い出す…
「ミッション船長はパニックを恐れなかった。パニックとは、すべてが生きているという突然の耐え難い悟り。ミッション自身がパニックの使者なのだ。パニックとは、人が何よりも恐れる知:己の起源の真相。すぐそこ。ことばをぬぐい去って、見るがいい。」(p6)
「時間は人間の苦悩である。人間の発明品ではなく、人間の監獄だ。時間がなければ一億六千万年というものに何の意味があるのか? そして食べ物をあさるメガネザルたちにとって、時間に何の意味があるというのか? …他の指と向かい合う親指を持っているけれど、道具は使わない。道具なんか必要ないのだ。武器を手にする人間に流れこんで満たす邪悪とは無縁–武器をとると、武器を持ったものが優位に立つ。武器を手にしたことで、ひどい勝ち誇った感覚が訪れるのだ!…人は時間の中で生まれた。時間の中で生きて死ぬ。どこへ行くにも時間を伴い、時間をおしつける。」(p25-26)
グレーバーが「負債論」の冒頭でマダガスカルを取り上げている…
https://hitkeas.com/2019/03/25/debt-2/
バロウズは嫌味がない…
品のない表現にも潔さを感じる…
モラルや常識の煩わしさからも解放されている…
うちのレオも喧嘩ばかりして手に負えない…
尻尾なんかそっくりだ…