原文
https://www.haaretz.com/amp/.premium-animal-holocaust-goes-on-says-vegan-guru-1.5278995
和訳
http://therealarg.blogspot.com/2020/09/Animal-Holocaust-Isnt-Over.html
ハラリによるヨーロフスキーへのインタビュー…
というより殆どそれぞれが自分の考えをぶつけてる…
2013年なので「サピエンス全史」が世に出る前年のものだ…
二人がヴィーガンであることは知っていたが、実際に接点があったことは知らなかった…
テーマ別に要約して、自分なりの解釈を加えてみた…
■テクノロジー/フィクション
人は動物に対し圧倒的に優位な立場だ…
それは何に起因するのか…
優位性にはどのような意味があるのか…
それは今後どういう展開に向かうのか…
ヨーロフスキーがまず挙げるのはテクノロジーだ…しかし人が技術を必要としたのに対し動物たちは必要としなかっただけであり、それは優位性を示すものではないと言う…逆に人は技術によって他者に危害を加える点で、倫理的に寄生虫と同じだと…
対してハラリが提示するキーワードは虚構…人は実際には存在しないものを共有する能力を持っている…虚構(フィクション)とは、国家、お金、人権、会社、神、いくらでもある…
ヨーロフスキーは「虚構」を「嘘」と読み替えて話を進める(虚構とは決して嘘ではないが…)…我々は騙されているようなものだ…しかし嘘は永遠に生き続けることはできない…抑圧された存在もいずれは自由と平等を得る…それには相当な時間を要する…
ヨーロフスキーは悲観しているようだが、最終的には好転する点で楽観的だとハラリは指摘する…ハラリによれば、人類は地球上で他の生物を根絶あるいは奴隷化する技術を発展させる一方で、自分自身を強力な神のような存在にアップグレードしているという…その流れには逆らえないと…
テクノロジー(道具)とフィクション(虚構)は、人が作り出すものとして似通っている…有形のものが道具であり、無形のものが虚構と言えるかもしなれない…いずれにしろ、自然から逸れた構築物のことであり、飛躍であり、歪みなのではないだろうか…人の思考あるいは理性は常にそういう有用性に支配されている…
最終的に動物は自由を手に入れるという点でヨーロフスキーは楽観的と言えるかもしれないが、ハラリの方も、技術を肯定している点ではある意味楽観しているようにも読める…
どこかに悪が潜んでいるわけではない…
人を形作っているものを放棄することもできない…
いかに折り合いをつけるか…
「サピエンス全史」で中心となるキーワードがここで見られるのは興味深い…
■無関心/無知
ハラリ「我々はひどい苦しみを目撃するとき、それが邪悪な人々によって引き起こされていると信じたがります。 我々は責任のある人を憎むように誘惑されるものだし、無関心な人よりも邪悪な人を憎む方が簡単だからです。 しかし、問題は憎しみではなく無関心であるため、責任者を憎むことにもあまり意味がないのです。」
ハラリの指摘は的確だと思う…上記に対してヨーロフスキーは無関心ではなく無知が問題だというが、無知を作っているのは無関心だろう…知ろうとしない…それが現実だ…では無関心を作っているのは何か…ある種の催眠状態…メラニー・ジョイの言う「カーニズム」…モラルによる防衛…
無関心は知識を寄せ付けない…
例え見えていても違うものとして見る…
間違った(あるいは大袈裟な)知識として嘲笑することも…
■暴力/非暴力
ヨーロフスキーは暴力による変革を肯定している…教育と少々の報復的暴力が常に答えだと…報復的とは、やられたらやり返すという意味だろう…平和であることが何よりだが、常に武装している…スイスみたいなものだろうか…マキャベッリ、マルコムX、マンデラが思い浮かぶ…対してソロー、キング、ガンジーは非暴力の部類に入る…ビコも同じだろう…
ハラリは暴力が前進に貢献することも確かにあるとしながらも、何の価値も生み出さないこともあるのだと言う…さらにフェミニスト運動やLGBTの活動は、暴力なしで結果を残していると…しかしヨーロフスキーはこれらの活動が非暴力のために依然として結果を残せていないのが実情だと言う…
現代の肉食産業は明らかに異常だ…
それは暴力を超えている…
ヨーロフスキーが肯定する暴力とは比較にならないほど巨大で異常な暴力だ…
テレビでは肉を食べて楽しむ番組が毎日放送されている…
SFよりもSFらしい…
厳しい環境下での肉食とは本質的に違うものだ…
■教育/政治
ハラリが教育の重要性を示唆すると、ヨーロフスキーもそれには賛成のようだが、ただし妥協は許さないと言う…妥協とは真実をベールで包むことだ…教育の現場には中立性が必要だと思うが、ヨーロフスキーはそれを受け付けない…また、理解を伴わない法律化(動物虐待防止法など)も効力がないと言う…まず、教育と暴力があり、その次に政治があると…世界をより良くできるのは政府ではなく、大衆だと…歴史的に見ても、マルコムX、ガンジー、マンデラ(後に政治家になってはいるが…)…功績を残せたのは活動家だ…
対してハラリは政治を肯定する…政治を省いて達成された大衆運動は思いつかないとさえ言う…政治には強力で前向きな要素があると…
■細胞バーガー
ハラリがよく話題に出す「細胞バーガー」…おそらく環境問題も倫理的問題も一気に解決できる…環境が整えば安全で安価なものになるのだろう…しかしヨーロフスキーが言うように、現在でも肉に似せた栄養価の高い加工品は多く、培養技術でわざわざ肉を作るのはある意味後退なのかもしれない…元々肉は健康的ではないのにと…
植物を育てるように肉を作る…まるで「身体なき器官」だ…それは何かの一部なのか、それとも全体とは無関係な独立物なのか…
■ホロコースト
ヨーロフスキーは畜産業をホロコーストとして認識している…
犠牲の数は実際のホローコーストを遥かに上回る…現在進行形だ…殺すだけじゃない…食べてさらに生産する…かつて人類は長い狩猟採集時代を経験し、現在でも厳しい環境下では畜産は生きるために欠かせない…しかし現代の多くの人にとって動物の犠牲はすでに必要なものではなくなっている…欲望の犠牲になっているだけだ…現代社会において肉食産業は欠かせない…持続可能なエネルギーへの転換と同じように、ヴィジョンを持ちたい…
人も動物も死を受け入れることができない…