There never was a West: or, democracy emerges from the spaces in between
DAVID GRAEBER
■ 序論
民主主義という言葉に共通する唯一の要素は、少数エリート層の関心事だった政治的諸問題が、構成員全員に開かれたものとなっている意識だとグレーバーは言う…それはあまりにも道徳的負荷を帯びているため、この言葉を使う論者は必然的に何らかの思惑を抱いているものらしい…グレーバーは自身の思惑(主張)をこの序論で五つに要約している…
1 民主主義が西洋の概念であり、その歴史がアテネに始まるという主張はいずれも正当化できない…西洋文明とは或る知的伝統を意味し、それは民主主義といえるものに敵対していた…その点では他の中国やインドと何ら変わりない…
2 民主主義的実践はどこにでも生じる…それは特定の文明や文化に固有のものではない…民主主義的実践は、人間の生活が強制力を備えた制度構造の外部で営まれるどんな場所にでも出現する…
3 知識人や政治家が自分たちの伝統に立ち返り、数々の事例を引き合いに、そこに民主主義的核心の存在を主張する…そのとき生み出されるのが民主主義的理想であり、私はその瞬間を「民主主義的再創設」のモーメントと呼ぶ…本来民主主義的理想および制度とは、様々な歴史と伝統の”あいだ”に生じる相互作用の所産であるのに…
4 民主主義的理想は、その手続きや実践を国家の強制的メカニズムと結合させようという不可能な夢を基盤としている…その結果生まれるのは、わずかな民主主義的要素しか持たない<共和国>である…
5 今日私たちが経験しつつあるのは民主主義の危機ではなく国家の危機である…ここ数年の民主主義への関心の復活は、完全に国家主義的枠組の外部から生じたものであり、民主主義の未来はこの領域にある…