◾️ 第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
ニューヨークで起きたゴミ収集作業員のストライキ…積み上がったゴミを前に市長は譲歩…アイルランドで起きた銀行員のストライキ…多くの予想に反し混乱は避けられた…それどころか経済は成長し続けた…ゴミ収集作業員は私たちの生活に必要不可欠だ…しかし銀行員はそうではないらしい…もちろん金融は資本主義社会にとって重要な役割を担っている…ところが今日の銀行は投機に忙しい…その業務は富を移転しているに過ぎず、さらには富の破壊にまで及んでいる…同様に社会にとって必要不可欠とは言い難い仕事が急増している…ロビイスト、コピーライター、税理士…今日高額の給料を手にしているのは、富を移転しているだけで、有形の価値を生み出さない人たちだ…逆に社会の繁栄を支える人たちは安月給に耐えている…
かつて主流だった農業は効率が上がるにつれて経済に占める割合を小さくしていった…工業も同じ道を辿り、代わりにサービス産業が多くの仕事を生み出している…グレーバーは「くだらない仕事」が増えたという…その職に就く本人たちが無駄だと認めている…現代は何も生産しなくても富を得ることができ、より多くの富が上層部に集中することで、優秀な人材が企業弁護士やロビイストや高頻度取引トレーダーといった職につく結果を招いている…これらの才能が富の移動ではなく富の創造に投資されていたら…
他人の金を使うギャンブルで儲けられなくなるのを待つ必要はない…例えば株取引には取引税を課せばいい…そして教育…身につけた知識とスキルがくだらない仕事に消えていかないように…期待や適応ではなく舵取りや創造を重視し、手段より目的を、有用性より善を優先させる…教育においては芸術や哲学や歴史がより重要な役割を担うことになるだろう…
◾️ 第8章 AIとの競争には勝てない
多くの先進国において生産性は伸びているにも関わらず賃金は減っている…理由はシンプル…仕事が減っているからだ…かつては織り工が織り機によって仕事が奪われ、現在小さな小売業はオンラインショップによって、小さな会計事務所は会計ソフトによって廃業に追い込まれている…テクノロジーが処理速度や輸送効率を上げることによって勝者は一握りに絞られ不平等は拡大している…アメリカでは古代ローマ時代よりも貧富の差が広がっている…20世紀は新技術が1300万の雇用を消したが2000万の新たな雇用を創出していた…人と機械はまだ肩を並べていた…しかし新世紀に入るとロボットが突然スピードを上げる…新しい雇用はスーパーやコンビニ、介護施設等の低所得層に集中している…それもいつまで続くか…
1765年、スコットランドで発明家ワットが蒸気機関の効率を上げる方法を思いついた…第1次機械化時代の始まりだ…1800年蒸気機関は水力の3分の1のエネルギーしか生めなかったが、70年後には成人男性4000万人分に相当する力を生み出すようになっていた…機械の力は驚異的なスケールで「筋力」に取って変わった…それから2世紀が過ぎ、新世代のロボットは人間の筋力だけでなく「知力」も代行するようになる…2004年に車の運転自動化は困難だとされたが、その6年後、グーグルのロボカーは100万マイルを走っていた…未来学者カーツワイルは2029年までにコンピュータは人間に追いつき、2045年には全人類の脳の総計より10億倍賢くなると予想している…
いま必要なのは斬新で根本的な対策だ…例えば労働時間の短縮とユニバーサル・ベーシックインカム…家電製品の開発が記録的な女性の職場進出を可能にしたことを誰が予測しただろうか…働くことが生きる条件であるかのようなドグマは捨てる時期にきているのかもしれない…豊かな社会と進んだ技術を手放さないのであれば、残る解決先は富の再分配しかない…かつてアーサー・C・クラークは「目指すべき未来は全員の失業だ」と語った…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
働かなくていいとか、それがどういう変化をもらすのか細部まで予測するのは困難だけど、例えば柔らかい食べ物ばかり食べることとか、クッションの効いた靴しか履かないでいたりとか、そういう些細なことの積み重ねも人を確実に変えているのだと思う…それが病気や怪我しやすい体の原因になっていたら…有用性より善を…慎重な見極め…難しい…
取引税もいいけど肉税もいいんじゃないか…
[…] https://hitkeas.com/2018/09/29/utopia-5/ […]