◾️ 第3章 貧困は個人のIQを一三ポイントも低下させる
チェロキーインディアンの経営するカジノが大成功を収めた…偶然にも現地の子供たちのメンタルヘルスを調査していたある教授は、カジノの成功によって貧困時代の問題行動が姿を消し学校の成績が向上する様子を目の当たりにする…貧しいとなぜ人は間違った判断をするのか…サッチャーはかつて貧困を「人格の欠陥」とさえ言った…貧困は社会ではなく個人の問題であり自力で解決すべきことだと…しかしチェロキーの事例を含め多くの研究結果は置かれた環境が原因であることを示している…貧しいと余裕がなくなり焦りや不安が判断を鈍らせる…長期的視野が奪われ目先のことだけでせいいっぱいになる…
一人当たりのGDPが最も高いアメリカは世界一裕福な国と言える…しかし社会問題の発生率も世界トップクラス…他国を含めた統計によると国内における不平等(格差)が犯罪等を増やしていた…現在アメリカン・ドリームを叶えるのが最も困難な国がアメリカになっている…
ユタ州でホームレスを一層するため無償でアパートを提供するキャンペーンが開始された…その結果慢性的なホームレスが74%減少…さらに福祉課や警察や裁判費用を節約することにも繋がった…同様の試みはオランダの主要都市でも行われ成功している…病気を抑えるのではなく治す政策…
◾️ 第4章 ニクソンの大いなる撤退
ウォーターゲート事件によって失職したニクソンであったが、1969年すべての貧困家庭(すべての国民ではないが)に無条件収入を保障する法案の成立に向けて準備していた…しかし補佐官の反対を受け中断に追い込まれ、再調査や内容の修正を経て発表に至るも結局世論を味方につけることはできず成立は夢と消えた…大きな壁となったのはイギリスのスピーナムランド制度(1795年)の失敗だった…
フランス革命の余波、トゥーロン包囲戦の敗退、凶作による穀物不足のなか、イギリス南部のスピーナムランド村では、最低限の生活水準まで収入を補填する支援制度を開始した…その効果は明らかで、飢えと困窮は減り混乱も抑えられ、たちまち南部全域に広がることとなった…しかしこの制度に疑問を呈する者もいた…牧師タウンゼントは「貧者を奮起させるものは飢えのみである」として注意を喚起し、経済学者のマルサスやリカードもやがて人口増加や食料不足を招き混乱は避けられないとした…1830年予言されていた暴動が起こる…政府は王立委員会を設置し大量の詳細なデータを収集…その調査はスピーナムランド制度の失敗を決定づけた…しかし1960年代から70年代にかけて、歴史家らはこの調査報告書を見直し、その大部分が捏造であることをつきとめる…1830年の暴動は脱穀機の発明による失業などが原因だった…また最近の研究によると、貧困の解消は出生率を下げることが分かっている…スピーナムランド制は貧困に対する効果的な手段であったし、景気拡大すらもたらした…ニクソンの側近たちは捏造された報告書の影響を強く受けていたのだった…
この数十年で私たちの住む福祉国家は監視国家の様相を帯びてきた…大きな政府が徹底的な監視戦略によって大きな社会に無理やり押し込めている…働き手は自らの強さを示すことを期待され、福祉の方からは自らの弱さを示すことを期待される…貧困者を社会の底辺に追いやるのにこれ以上確かな方法はない…失業の原因は仕事ではなく労働者にあるとみなされ、技能を磨かなかった或いは全力を尽くさなかった失業者のせいとされている…貧困のない生活は働いて手に入れるべき特権であり誰もが得られる権利ではないと…これらは40年ほど前にもう少しで払拭することができた大きな誤解だ…
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バグダッドカフェではヤスミンのおかげで店は繁盛しブレンダはミュージカルまで披露する…旦那も帰ってくる…すべてがうまくいくようになる…極端な話だが人は環境によって変わるものだ…表面的なことだけではなく能力が解放される…
愚かだから貧しいのでなく、お金がないから愚かになる…現代社会は貧困が必ず生まれる構造になっている…もちろん個人の責任という側面が消えることはないのだろうけど…
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