Social Security

■ アメリカ

独立国となったアメリカはイギリス救貧法を模倣し運営は地方政府に任せた…しかし自由主義を信奉するアメリカにおいて公的機関である地方政府の救貧活動が好意的に受け入れられることはなかった…19世紀後半には民間の慈善団体が組織されたり、大学関係者が慈善活動を行うなど、ソーシャルワークと呼ばれる公的機関以外の慈善活動が目立つようになる…さらに大企業による独自の企業福祉も見られた…アメリカ国民は租税負担を望まず、連邦国家であり地方の権限も強いことなどから、社会保障制度の確立は進まなかった…

1775-1783 アメリカ独立戦争(1776 アメリカ独立宣言)
1861-1865 南北戦争
1914-1918 第1次世界大戦
1929 世界大恐慌
1932 失業保険制度(ウィスコンシン州/アメリカ初)
1933-1937 ニューディール政策
1939-1945 第2次世界大戦

19世紀末〜20世紀初頭にかけて、アメリカでもヨーロッパの社会保障制度を導入する機運が高まる…例えば医療制度…しかし医師会の抵抗に遭う…自由経済思想が根強いアメリカにおいて社会保険は社会主義的な制度として受け取られた…医療保険制度の導入は現在まで不十分な状況であり、オバマケアによってわずかな進展が見られたにすぎない…ようやく施行された最初の社会保険はウィスコンシン州における失業保険制度だった…今日の全米の失業保険の原型となっている…特徴的なのは企業が全額を負担するというもの…労働者負担はなかった…ただし自ら辞職した場合は給付がない…この方式は今日まで引き継がれている…

▶︎制度学派経済学(ヴェブレン/コモンズ/ミッチェル)
ウィスコンシン州の失業保険制度導入にはコモンズが法案構想の中心を担っていた…コモンズ等の思想は制度学派経済学と呼ばれる…ヴェブレンによれば、社会は新古典派が言うように経済原則だけによって動いていくものではなく、歴史や制度の影響を受けると主張…また、営利だけを目的とする企業を批判した…

▶︎ニューディール政策(ルーズベルト)
アメリカに端を発した世界恐慌は国内に甚大な被害をもたらし、大都市には路上生活者があふれ、食を求める貧困者が路頭に迷った…ルーズベルトは諸々の経済政策を実行し経済回復を軌道に乗せた…RFC(復興金融校舎)による救済融資や公共事業による景気回復を試みた…アメリカにおけるケインズのマクロ経済政策…

第2次世界大戦の戦場を免れたことやで戦争特需によって、アメリカは未曾有の経済発展を遂げ資本主義大国として君臨することになる…しかし貧困者の数は1962年において全人口の5分の1を占めた…ケネディ、ジョンソンは貧困の克服を掲げて福祉の充実を試みたが、自立精神を重視する気風や人種問題などが障壁となり政策が実施されるまでには至らなかった…

▶︎メディケア/メディケイド(1965)
一般国民向けではなかったが、生活困窮者に対して医療保険制度が導入された…高齢者を対象としたメディケア、低所得者/身障者を対象としたメディケイドに分かれる…運営は州に任され、内容も州によって異なる…

▶︎医療保険制度改革(2010)
オバマケアとも呼ばれる…全国民が平等な条件のもとに加入できる制度とは言い難い…私的保険が主流であるなか全国民の加入が義務付けられていたり罰金制があるなど問題点が指摘されている…トランプ大統領はオバマケアの廃止を訴え選挙に挑んだが、オバマとの会談によって維持する意向を示した…しかし今日まで廃止と見直しで揺れ頓挫している

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アメリカは自由を謳いつつ一方で差別や偏見が根強い…銃規制すれば確実に悲劇は減ると思うのだけど、それができないアメリカ…