Social Security

■ デンマーク

ノルマン人(ゲルマン人)の一派であるデーン人が住みつき、8世紀〜11世紀のヴァイキングの時代にはヨーロッパ諸国を支配下に置き貿易を行った…以下デンマークの略歴だが大国として戦い続けた歴史がある…お隣スウェーデンとは常に戦争状態だった…しかしデンマークは相次ぐ敗戦により大国から転落…スウェーデンもあとを追うように大国としての地位を失う…

800-1050 ヴァイキング時代
1016-1042 北海帝国(同君連合/イングランド、デンマーク、ノルウェー)
1397-1523 カルマル同盟(同君連合/デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)
1524-1814 デンマーク=ノルウェー(同君連合)
1534-1536 伯爵戦争
1618-1648 三十年戦争(デンマーク=プロテスタント派敗退)
1643-1645 トルステン戦争(スウェーデンに敗退)
1700-1721 大北方戦争(スウェーデンに敗退)
1803-1815 ナポレオン戦争(フランスと同盟→敗退)
1814 キール条約(ノルウェーはスウェーデンの支配下に)

19世紀までのデンマークの生活は農業、酪農、畜産業が中心だった…イングランドやフランスの自由思想の影響もあり、18世紀ごろから国王や貴族などの支配階級に対する抵抗運動が行われるようになるが、その中心は農民だった…19世紀に入り高まりを見せる解放運動の結果1848年には自由憲法が制定される…血を流すことなく絶対王政は崩壊する…その後ドイツの外部への拡張路線により、デンマーク国内でナショナリズムが高まりを見せる…また19世紀後半の工業化による労働者増加が社会主義思想の支持者を増やした…社会民主党の成立…ビスマルクの社会保険構想も導入される…

1848-1852 第1次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争
1848 絶対王政崩壊
1864 第2次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争(プロイセン勝利)
1878 社会民主党設立
1891 年金制度(税収財源)
1892 医療保険(社会保険)

▶︎グルントヴィ(1783-1872)
牧師、詩人、哲学者、教育者、政治家であった…その思想はデンマーク国民に大きな影響を与えている…「全ての人が平凡でも質素に暮らす楽しさがよい」としている…グルントヴィの思想は福祉国家への出発点となっている…

▶︎ドイツ(ビスマルク)との違い
現代の社会保障の2大潮流はドイツとデンマークにある…
その違いはふたつある…
1)全国民が対象…ドイツが労働者を対象としたのに対してデンマークは全国民を対象とした…つまり農民も公務員も同じ制度に加入…全国民を対象とする精神は「ベヴァリッジ報告」にも受け継がれている…
2)税収財源/定額給付…ドイツが社会保険料によるものだったのに対してデンマークはすべて税収を財源とし、年金などは定額給付とした…保険料の場合、所得のない又は少ない人からの徴収は望めないが、税収なら所得移転が可能となる…医療保険は社保料制だったが、1970年代に税収制になった…

第1次世界大戦では中立を維持…第2次世界大戦ではナチスドイツに宣戦されたが僅か1日で降伏…大戦中に連合国に接近し1944年にドイツ軍から解放…アイスランドは独立へ(グリーンランド、フェロー諸島はデンマーク領)…デンマークは常にドイツの圧力を感じながらも、相次ぐ敗戦の結果、福祉を選択したと考えることもできる…医療や教育などの充実によって国民意識の高揚と団結を期待した…

▶︎国民負担率
所得に占める税と保険料の拠出合計の割合…高ければ自由に使えるお金は少ない…デンマークの国民負担率は現在70%であり世界一位…そのほとんどは税収である…

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これだけ負けたら福祉に向かうのも理解できる…グルントヴィの思想はムヒカ元大統領の思想とリンクする部分があると思う…ただデンマークは依然徴兵制を維持…ウルグアイは徴兵制を採用してない…

国民負担率はルクセンブルクの方が実は高い…ナント95%!…給料もらってるのか…どうもコミューターという出稼ぎ労働者のせいらしい…