SAPIENS

サピエンスは「虚構」という人工的な本能によって、見ず知らずの厖大な人たちが協力できる「文化」というネットワークを作りだした…文化は環境の変化、他文化との交流によって変化する…さらに、虚構に内在する避けられない矛盾に折り合いをつけるかのように変化する…中世の文化は騎士道とキリスト教の間に折り合いをつけられなかった…同様に現代社会も自由と平和に折り合いをつけられずにいる…これらは文化にとって欠点ではない…創造性と活力の源だろう…
文化は統一と分裂を繰り返しながら徐々に大きな枠組みへと拡大していく…多様で異なる文化のようでも、次第に同じ概念で口論し、同じ武器で争うようになる…トマトはメキシコ原産だが、イタリア料理に欠かせない…インディアンが乗る馬はヨーロッパ原産…いずれも文化交流によるものであり、純正はもはやありえない…このようなグローバル化の重要な段階は紀元前1000年紀に訪れていた…サピエンスは全世界と全人類を想像し、普遍的な3つの秩序を発明する…
貨幣 貿易商人にとって全人類は潜在的な顧客…
帝国 征服者にとって全人類は潜在的な臣民…
宗教 聖職者にとって全人類は潜在的な信者…

狩猟採集民に貨幣はなく、農業革命の後も自給自足と物々交換で少数社会が維持されていた…しかし都市や交通の充実と専業化に伴い、価値を素早く容易に比較、交換、貯蓄ができる貨幣が発明された…貨幣は貝殻で十分だったし、監獄でタバコが貨幣として使われた例もある…今日、硬貨や紙幣の占める割合は全体の1割弱に過ぎない…9割はコンピューターの中にある数字となった
歴史上、最初の貨幣はシュメール人による大麦を使った交換制度とされている…実用性のある大麦は信頼を得ることができたので貨幣として機能した…しかし運搬や保存には適さなかった…その後それ自体本質的価値がなくても劣化しにくく信頼できるものとして銀が使われた…最初は銀の重さのみで価値が計られたが、後に一定の金属の重さとその数量で価値が計られるようになる…
史上初の硬貨は紀元前640年ごろリュディア王国で造られた…刻印された重量は測る手間を省略でき、偽造は王に背く行為として死刑に処された…
ローマ帝国ではデナリウス銀貨が信頼を得る…他国の貨幣も開発され、徐々に貨幣制度の関係が確立…近代では世界がドルやポンドなどの少数の通貨に依存した貨幣圏が成立した
貨幣ほど公平で異なる文化をとりもつ制度は他にない…貨幣のおかげで世界は統一へ向かうことができた…しかしあらゆる価値が貨幣で転換されることになり、各地の伝統や親密性が失われ、需要と供給の冷酷な法則が支配的となった…今日私たちは貨幣に依存した生活をしている…