サッカーの試合を可能にしているのは、サピエンスがルールを学んだからであり、決して遺伝子にコードが組み込まれているからではない…ハチやアリはDNAに行動がプログラムされているが、サピエンスはデータベースである脳への書き込みから始めなければならない…しかし脳は容量制限があるとともに新しい生命に引き継ぐこともできない…そして大きな社会は膨大で複雑な情報を必要とする…人類は脳の外にデータを保存する術を手にする…「書記」の誕生
シュメール人による人類初の書記は話し言葉の文字化ではなく、数の記録など限定的なものだった…やがてメソポタミアで楔形文字、エジプトで象形文字という完全な書記体系が確立される…
数理的データの保存や処理においては9世紀以前に発明されたアラビア数字によって飛躍的に効率を上げることになった…アラビア数字は今もなお、世界の最も有力な言語となっている…さらに今日、数理体系は0と1だけの2進法によるコンピューター処理へと進化している…書記とは人間の能力をサポートするものであったが、次第に人間の意識の主人へとなりつつある…
サピエンスに巨大な社会を維持する本能はない…可能にしたのは虚構と書記…しかしそれらは公正性と中立性において十分とはいえなかった…例えばハンムラビ法典、アメリカ独立宣言、カースト制度…いずれも貧富の差や奴隷制や人種差別の上に築かれた
ヒエラルキーが何に由来するかは歴史を辿れば分かる…それらは偶然を契機とし、支配層に利用されることで定着していった…十分な教育機会も活動の場も与えられない奴隷や黒人やシュードラは、無能で貧祖な姿がまるで生来のものであるかのように扱われた…
社会が異なればヒエラルキーも異なる…差別に根拠はないということ…世界で唯一共通している男女差別も同様だ…多くの社会で女性は男性の財産に過ぎず、例えば強姦の被害者は当の女性では無く所有している男性であった…しかし「男性」「女性」という言葉そのものが社会的カテゴリーなのであり、想像上のものに過ぎない…あるのは「オス」「メス」という生物学的区分だけ…ボノボなど他の動物社会を見ても人間社会のような男性優位は見られない…なぜ人間社会だけが男性優位になったのか…今日、女性は男性と同等の地位と権利を獲得しようとしている…同時に同性愛も認められつつある…性差別が想像上のものであることを裏付けるかのように…急激に…世界中で…