SAPIENS

1.2万年前、サピエンスの生活は農耕と牧畜によって一変する
それは生命を操作することを意味する
IPS細胞から臓器を再生することと同じだろう
すでに紀元前3千5百年前には、人類による栽培化/家畜化はピークを過ぎていた…

農業は蓄えを含む多くの食料とともに急激な人口増加をもたらした…しかし豊かに思えた生活環境は悪化の一途を辿る…1日の殆どを労働で過ごすようになり、関節炎やヘルニアに悩まされ、定住が感染症の温床になることによって幼い子供が犠牲になった(お粥により離乳が早まり抵抗力が落ちたことも原因)…人口増加は高い死亡率を上回る出生率のおかげだ…貧富の差は拡大し、労働者に返ってくる食料は減り…恵みをもたらすはずの土地は争いを激化させる要因にもなった
生活は決して楽にはならず負担は増えたが、一度手にした農業を手放すこともできなかった…現代において携帯電話による利便性が実際はより忙しい状況を作っていることと同じであり、効率が良くなればそのぶん負担が増す仕組みは変わらない…

現在、地球上で鶏は人間の3倍存在し、鶏以外の家畜総数は人間の半数を優に超えている…絶滅が叫ばれる種が存在するなか、家畜は個体数に関しては恵まれている…しかしその内実を占めるのは残酷な慣行だ
野生の場合、鶏は10年、牛で20年生きるが、家畜の場合は産まれて数週間から数ヶ月で殺される…酪農なら雌牛はその生涯において妊娠状態を強いられ、産まれた子牛と対面する時間すら与えられない…子牛は雄なら食肉へ、雌なら乳牛へ…

農耕への移行により定住を強いられたが、土地への執着はそれを守るための人工的な砦をもたらし、村落、町、都市へ姿を変えていく…種の進化するスピードに対し、農業による変革のスピードはあまりにも速く、豊かさは対立や紛争の契機にもなっていった…やがて一部の支配層やエリート層が台頭することになり、法のもとに国を建設…ハンムラビ法典、アメリカの独立宣言…人々はヒエラルキーの中にいようが平等であろうが、人権をもっていようが自由であろうが、それらはいずれにしろ作られた「神話」でしかない…国を治める力は「想像上の秩序」に由来する…そこに求められるのは正しさではなく信じさせる力…

「想像上の秩序」はキリスト教、民主主義、資本主義をもたらす…それ等は人々に、その秩序が神が示したもの或いは自然法則に従ったものであることを強調する…決して同じ人間が作ったものではなく…その原理はあらゆる手段を使って徹底的に教育される…
私たちはそれぞれの時代に支配的な神話によって価値観をつくっている…階級制度が重要視される時代の子供は大勢の若者と一緒に広間で寝ていたが、プライベートが重視される今日では核家族化が進むと同時に子供に個室が与えられる…消費社会においては、何らかの不具合や物足りなさを物やサービスで埋めようとする…コーラ、ハンバーガー、ダイエット商品、ブランドもの、観光…
想像上の秩序は個人の主観でも客觀でもなく、共同主観的であると言える…すなわち法律、貨幣、神々、国民、倫理、それらは共同主観的な想像上の産物である…今の秩序を変えるには別の強力な秩序を想像する必要があり、それは神話から逃れることができないことを意味する