SAPIENS

私たちサピエンスは20万年前にこの世に現れた…そして農業が開始される1万2千年前まで、私たちは狩猟と採集で生き抜いた…この狩猟採集時代こそ最も長く生きた時代であり、今の私たちを形成し現在に影響を残した時代だと考えることもできる…

当時のサピエンスは同じ身体的特徴を持っていたにも関わらず、虚構の登場によって異なる想像上の現実を生み出すことができた…生活をともにする各部族によって、異なる独自の言語/習慣/価値観を持っていたと考えられている…部族構成を例にとるなら、現在主流の一夫一婦核家族制以外に、もっと原始的な共同体もあったとういう説もある…つまり男性は父権を持たず、女性は同時に複数の異性関係を持ち、部族全員で子育てをする…この説の支持者は、長い時間をかけて埋め込まれた遺伝子が現代の一夫一婦制に合わず、それが不倫や離婚の絶えない要因だと考えているらしい…嫉妬や不倫に対する罪意識、殺人に対する罪意識、それらは社会に依存しているのだろうか…

狩猟採集時代とはいえ、当時のサピエンスは豊かな生活をしていたと考えられている…この時代に犬はすでに飼いならされている…また部族間で希少な贅沢品を交換したり宗教的な祝祭をしたり、石の槍やナイフを作り、衣服を縫い、ウサギ用の罠を仕掛け…サピエンスは自然の知識と物を加工する器用さ、危険を察知する感覚、俊敏で強靭な身体を併せ持っていた…さらに狩りは3日に一度、採集は毎日3〜6時間程度と労働時間も短く効率的…飢えや栄養不良もなく、八十歳まで生きるものもいた…感染症の心配もなかった(感染症の殆どは家畜に由来するが、この時代に家畜は存在しなかった)

内面はどうだったか…彼らはアニミズムを信奉していた…人間と他の存在に壁はなかった…世界には優劣も中心もなかった…その片鱗はラスコー洞窟の壁画などに残されている…

そしてこの時代は開拓の時代でもあった…サピエンスの最初の偉大な到達はこの時代の陸地制覇といえる(次がコロンブスのアメリカ大陸到達、そして最新がアポロの月面到達)
サピエンスは4万5千年前にオーストラリアに到達する…短い距離とはいえ航海の技術を手にしていたということだ…しかしサピエンスがこの地に移住するのと時を同じくして、巨大なディプロトドンを含めた生物種の殆どが絶滅に追いやられた…狩猟と火による開拓が原因ではないか…火事に強いユーカリの木に生息していたコアラだけは生き残った…3万5千年前には日本、そして1万6千年前には極寒のシベリア、アラスカを超え、アメリカ大陸に到達する…そこでもマンモスやサーベルタイガーなどの巨大生物種がほぼ姿を消した…
サピエンスはこの地球上で最も危険な種となった…異星人の地球侵略と同じことをサピエンスはすでにやっていたことになる…それは何の悪意もなく遂行された…そして生態系を一変させたことは、この時代にして環境破壊の前科を作っていたことになる…私たちの祖先が自然と調和して生きていたとは到底言い難い
この侵略行為ともいえるサピエンスの開拓は、海洋動物の住処である海中と、知られることのなかった孤島(ガラパゴスなど)には及んでいなかった…しかし現在、深海以外は既知の世界だろう…絶滅が危惧される海の生き物も多い…絶滅を逃れることができるのはサピエンス自身と、このあとサピエンスの奴隷となる家畜たちだけなのかもしれない